10%強の価格低下が生じるとしても、土地の現物分割を認めた事例

遺産の土地・建物や、共有状態となっている土地・建物の分割について、相続人間(もしくは共有者間)での話合いで解決できなかった場合、裁判所の調停・審判・訴訟ではどのように分割されるのでしょうか。

不動産の分け方というのは大きく分けて4つあります。

①現物分割

②代償分割

③換価分割

④共有分割

の4つです。

上記のうち、原則的な方法は、①の現物分割、すなわち、まさにそのものを分ける、という方法になります。

これは、できる限り目的物を現実に利用している者の生活に配慮して分割すべき、との趣旨から、まずは原則として物そのものを分けることを検討すべき、ということとなっているわけです。

しかし、この分割方法は、あくまでも「物そのものを分ける」ということになりますので、土地などの不動産の場合には、そのまま法定相続分や共有者の数に従って土地を分けると、例えば100㎡の土地を相続人4人で分けたら一人当たり25㎡になってしまい、もはや土地の利用価値がなくなってしまいます。

とても広い土地であれば別ですが、普通の住宅地などではまず意味のない分け方になってしまいますので、一般的な宅地の場合にはこの方法によることはできません。

一戸建ての建物なども、法的にも物理的にも分けることは困難ですので、この現物分割の方法が執られることはありません。

では、仮に広い土地などで、現実に分けられそうである、という場合に、さらに現物分割をするにあたってはどのような考慮が必要になるのでしょうか。

この点、民法258条は、

1 共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。

2 前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。

と規定していますので、現物分割の条件として、

「現物分割によってその価格を著しく減少させるおそれ」

があるかどうか、という点も十分考慮する必要があるということになります。

土地や建物を現状から分ける場合には、価値が上昇したり、逆に減少したり、ということが起こりうるわけですが、

「どの程度の下落までは現物分割で許容範囲なのか」

という点が問題となります。

この点について、一つの目安を示したのが東京地裁平成9年1月30日判決です。

この判決の事例は、三筆の土地と三棟の建物をいずれも二人で各持分二分の一の割合で共有していて、共有物分割請求訴訟が提訴されたという事例です。

原告側は、土地を南北に分ける現物分割を希望し、被告側は、現物分割では価値が著しく減少するとして換価分割を希望していました。

この事例で裁判所は、

「被告は現物分割によって本件各土地は著しくその価格を損するおそれがあると主張するが、・・・全体を一括して売却した場合には約一億一〇〇七万円の価格であるのに対し、分割して売却した場合の価格の合計は九七五〇万円から九七九二万円程度に低下する旨の記載がある。」

「しかし、右記載によっても、本件各土地を一括して売却の場合に比してその低下の割合はせいぜい一〇パーセント強程度に過ぎず、現物分割によって本件各土地の価格が著しく損するとまでは到底認められず、他に一個の所有権である場合に比して、その価格が著しく減少すると認めるに足りる証拠はない。」

と述べて、10%の下落では、「価値が著しく減少するとまでは認められない」という判断をしました。

なお、本事例では、土地や建物のこれまでの使用状況や、分けた後に想定される使用状況なども踏まえて、現物分割の可否や方法について検討していますので、価値の減少額の程度のみで、その可否や方法が判断されるわけではないという点に留意が必要です。


2018年11月16日更新