親の家で同居して介護してきた子の寄与分の主張について、家賃相当額を差し引いた裁判例

Q 父が亡くなりました。相続人は姉と私の2人です。

父が亡くなるまでの約5年間、姉が父の家に住み込みで父の介護をしてきました。

そのため、遺産分割の時に、姉は父の介護をしてきたことを理由に相続分を多く主張してきています。

姉が父の介護をしてきてくれたことは感謝していますが、しかし、姉はその間父の家に無償で居住していたわけですから、全くの無償の介護とは言えないと思います。

姉の主張は認められるのでしょうか?

A 介護による特別な寄与を認めて相続分を多く獲得することは認められる可能性はありますが、家賃相当額をそこから差し引いて最終的に寄与分を算出することとなります。

親が重度の要介護状態のために常時付き添いが必要な状態であるような場合で、子が介護サービスなどを利用せずに介護したり、もしくは介護サービスの費用を負担した場合、このような負担をした子は、他の兄弟よりも多く相続分を主張できます(寄与分)。

しかし、その子が、例えば親の所有する不動産に無償で住んでいて介護していたような場合、その子は家賃相当額の出費をまぬがれているわけですから、いくら介護をして苦労したといえども、他の兄弟との関係ではこれを考慮しないと不公平ということになってしまいます。

そこで、このような場合には、介護による特別な寄与を認めて相続分を多く獲得することは認めるものの、家賃相当額をそこから差し引いて最終的に寄与分を算出するというのが裁判実務の傾向です(大阪高等裁判所平成19年12月6日決定参照)。

寄与分を認めるにあたっても、あくまでも「公平」という観点が重要なのです。


【判旨;大阪高等裁判所平成19年12月6日決定】

「被相続人は平成10年頃からは認知症の症状が重くなって排泄等の介助を受けるようになり、平成11年には要介護2、平成13年は要介護3の認定を受けたもので、その死亡まで自宅で被相続人を介護したCの負担は軽視できないものであること、Cの不動産関係の支出は、本件の遺産の形成や維持のために相応の貢献をしたものと評価できるけれども、本件建物の補修費関係の出費は、そこに居住するC自身も相応の利益を受けている上に、遺産に属する本件建物の評価額も後記のとおりで、その寄与を支出額に即して評価するのは、必ずしも適切でないこと」、「Cは、もともと、親族として被相続人と相互扶助義務を負っており、また、被相続人と長年同居してきたことにより、相応の利益を受けてきた側面もあること等本件の諸事情を総合考慮すれば、Cの寄与分を遺産の30%とした原審判の判断は過大であって、その15%をもってCの寄与分と定めるのが相当というべきである。

そうすると、後記のとおり、本件遺産の評価額合計は、9360万3235円であるから、Cの寄与分は、その15%に当たる1404万0485円となる。」


2015年11月30日更新