子どもとの面会を裁判所で決めたのに相手が会わせてくれない場合の対処法

Q 妻が子どもを連れて家を出ていってしまいました。

その後、妻から離婚調停の申立がなされ、離婚の条件について色々と調停の席上で話し合いをしました。

結果、子どもの親権は妻とすることとなりましたが、その代わりに毎月1回は私は子どもと面会できるということも調停条項の中で決めてもらいました。

その後、調停で決めた子どもとの面会の日が近づいてきたので、妻に子どもとの面会の件について連絡したところ「子どもが会いたくないと言っている。」等と言って会わせてくれません。

裁判所で月1回は子どもと面会すると決めたのに、妻が嘘かホントか、子どもが会いたくないという理由で会わせてくれないのは納得できません。裁判所の調停で決めても無意味なのでしょうか?

A 面会についての方法を具体的に決めておけば、間接的に面会を強制する申立を行うことが可能です。

調停や裁判で、面会交流について条件を定めたのにも拘らず(例えば月1回は会わせるといった内容)、相手がそれを守らなかった場合、法律的に取りうる手段としては裁判所に強制執行を申し立てることになります。

もっとも、強制執行と言っても、いくら裁判所といえども無理やり力づくで子どもを引っ張り出して面会をさせる、といったことは当然ながらできないので、「間接強制」という方法になります。

「間接強制」とは、つまり、裁判所で決めた条件を守らなかった場合は、守らなかったこと1回につき・・・円を払え、という命令を裁判所に出してもらい、「間接的に」裁判所の決定に従うよう仕向ける方法です。

要するに、従わなかったことについて罰金を課すような感じです。

面会交流の場合、「会わせなかったこと1回について5万円を払え」、といった命令を裁判所に出してもらうことになります(なお金額については色々とバリエーションがありますが、面会交流の場合は概ね1回につき5万円前後になると思われます。)。

もっとも、この間接強制の方法は簡単に認められるものではなく、面会交流の方法や条件について、調停や裁判で具体的に決めておかなければなりません。

面会交流の方法や条件の決め方が曖昧だった場合、間接強制を申し立てられた側(本件では妻)が、何を守ればお金を払わずに済むかということが明確にならないからです。

では、どの程度まで面会交流の方法や条件を決めておく必要があるのでしょうか。

この点について、最近最高裁判所の決定が出されたことで注目されています。

最高裁判所平成25年3月28日決定は、

「面会交流の日時、各回の面会交流時間の長さ及び子の引渡しの方法」

を定める必要がある、と述べています。

ちなみに、この日は最高裁判所で面会交流について3件の決定が出され、3件のうち間接強制が認められたのは1件だけで、その他2件は間接強制が認められませんでした。

結論が別れたのは、「面会交流の日時、各回の面会交流時間の長さ及び子の引渡しの方法」の決め方の具体性の違いによります。

間接強制が認められた方の事案の面会交流の条件は

  1. 面会交流の日程等について、月1回、毎月第2土曜日の午前10時から午後4時までとし、場所は、長女の福祉を考慮して相手方自宅以外の相手方が定めた場所とすること、
  2.  面会交流の方法として、長女の受渡場所は、抗告人自宅以外の場所とし、当事者間で協議して定めるが、協議が調わないときは、JR甲駅東口改札付近とすること、抗告人は、面会交流開始時に、受渡場所において長女を相手方に引き渡し、相手方は、面会交流終了時に、受渡場所において長女を抗告人に引き渡すこと、抗告人は、長女を引き渡す場面のほかは、相手方と長女の面会交流には立ち会わないこと、
  3. 長女の病気などやむを得ない事情により上記①の日程で面会交流を実施できない場合は、相手方と抗告人は、長女の福祉を考慮して代替日を決めること、
  4. 抗告人は、相手方が長女の入学式、卒業式、運動会等の学校行事(父兄参観日を除く。)に参列することを妨げてはならないこと

と具体的に決められています。

他方で、間接強制が認められなかった方の事案では

ア 相手方は、抗告人に対し、長男と、2箇月に1回程度、原則として第3土曜日の翌日に、半日程度(原則として午前11時から午後5時まで)面接をすることを認める。ただし、最初は1時間程度から始めることとし、長男の様子を見ながら徐々に時間を延ばすこととする。

イ 相手方は、前項に定める面接の開始時にa県b市のc通りの喫茶店の前で長男を抗告人に会わせ、抗告人は終了時間に同場所において長男を相手方に引き渡すことを当面の原則とする。ただし、面接交渉の具体的な日時、場所、方法等は、子の福祉に慎重に配慮して、抗告人と相手方間で協議して定める。

ウ 抗告人と相手方は、上記アに基づく1回目の面接交渉を、平成22年1月末日までに行うこととする。

というものでした。

二つの事案を見比べるとわかるように、面会交流の間接強制が認められなかった事案の方は、各回の面会交流時間の長さについて

「半日程度(原則として午前11時から午後5時まで)」としつつも、「最初は1時間程度から始めることとし、長男の様子を見ながら徐々に時間を延ばすこととする。」

としたり

「面接交渉の具体的な日時、場所、方法等は、子の福祉に慎重に配慮して、抗告人と相手方間で協議して定める。」

とするなど、条件について協議する余地を残しており具体的に定めずに曖昧さを残していたことが、結論を分けたものと言えます。

調停の場や裁判では、子どものことに配慮して、あまり面会の条件をガチガチに決めずに、双方親どうしで柔軟に対処できるように「協議する」といった曖昧な決め方をすることも多かったのですが、この最高裁の登場により、今後は、面会交流の条件もガチガチに固めなければならないと思われます。

因みにこの最高裁は

「子の利益が最も優先して考慮されるべきであり(民法766条1項参照)、面会交流は、柔軟に対応することができる条項に基づき、監護親と非監護親の協力の下で実施されることが望ましい」

とも述べていますが、何とも理想と現実のような皮肉にも聞こえます。


2015年11月30日更新