ワンマン会社の社長が離婚する場合、会社の財産は財産分与の対象となるか。

Q 夫は自動車の販売会社を経営しています。

社員は2人しかおらず、私が経理や総務の仕事をしていて、実質的には夫婦で経営しているような状態でした。

夫とは離婚することになり、今現在離婚の条件について話し合いをしていますが、夫名義の財産があまりなく、税金対策などで車や不動産など会社名義のものが多いのです。

会社は、夫婦で経営していたようなものですし、会社名義の財産と言っても、実質的には夫が個人で使っていたようなものばかりです。

会社名義のものは財産分与の対象とはならないのでしょうか。

A 原則として財産分与の対象とはなりませんが、会社が夫と妻だけの同族会社のような場合には、会社の財産も財産分与の対象となります。

俗に、日本の法人(株式会社、有限会社等)の9割は法人成りした個人事業と言われており、従業員は社長だけ、もしくは社長とその家族だけだったり、従業員が社長とパート1名だけだったりという会社が圧倒的に多いのが実情です。

このような個人事業のような会社の場合、社長は会社名義で自宅用の自動車や備品などを買ったり、会社の財布と家の財布が混同していたり、ということも多々あります。

こういう会社をここでは便宜上「ワンマン会社」と言いますが、ワンマン会社の社長が離婚する場合に問題になるのが、「会社の財産も財産分与の対象にならないのか」ということです。

先ほどの例で言えば、会社名義で買った車を、社長がプライベートでも家族用で乗り回している場合、それは感覚的には会社のものと言うよりも夫婦の共有財産ではないかとも言えるからです。

この点について、裁判所の基本的な見解は、法人はあくまでも個人とは法的に別個の存在であり、財産分与とはあくまでも夫婦個人の財産を分けるものであるから、原則として法人の財産は対象とならない、ということになっています。

しかし、こう言いきってしまうと、ワンマン会社の社長は何でもかんでも法人名義で買っておけば(自動車のみならず、家なども)、離婚しても相手に分けることなくそのまま自分だけで所持し続けることができてしまうという不公平な事態が生じてしまいます。

そこで、このような不公平な事態を回避するために、裁判所は、ワンマン会社が夫と妻だけの同族会社であるような場合、その法人の財産も財産分与の対象として夫婦で公平に分けるべきという考え方をとっています。

広島高等裁判所岡山支部平成16年6月18日判決は、個人で自動車修理業を営んでいた夫が、事業を拡大して妻を代表取締役とする自動車販売会社を設立し、さらに夫婦で不動産管理会社を設立するなどして、会社名義で不動産ほか多額の資産を形成し、妻は夫の仕事を手伝い、経理事務担当、自動車販売、不動産管理の業務に従事するなどして、会社の資産形成に大きく貢献したという事案で、夫婦で経営していた同族会社であるという事情を重視して、その会社の財産も財産分与の対象とすべきと判断しました。

以上の通り、ワンマン会社の社長は、離婚の際には会社の財産も半分は財産分与の対象となる、考えておく必要があります。


【判旨:広島高等裁判所岡山支部平成16年6月18日判決】

「C川社は、一審原・被告が営んできた自動車販売部門を独立させるために設立され、D原社は、一審原・被告が所有するマンションの管理会社として設立されたものであり、いずれも一審原・被告を中心とする同族会社であって、一審原・被告がその経営に従事していたことに徴すると、上記各会社名義の財産も財産分与の対象として考慮するのが相当である。」


2015年11月30日更新