離婚直後に夫が破産した場合、夫から妻に財産分与した財産は取り消されるか。

Q 夫が多額の借金を抱えていたことが発覚し、離婚することになりました。

離婚の際には、財産分与として自宅をもらうことになり、自宅の名義を夫名義から私に全部移転してもらいました。

離婚してから間もなく、夫は裁判所に破産の申立をしたようです。

夫から財産分与された自宅は大丈夫なのでしょうか?

A 過大な財産分与と評価されてしまう場合には、後に夫の破産手続の中で裁判所から取り消すよう命じられてしまうことになります。

離婚の際に、夫から妻に財産分与として預金だったり不動産が譲渡されることはよくありますが、離婚の際にすでに夫が多額の借金を抱えていて、離婚後まもなく破産してしまった場合、夫から妻への財産分与が取り消されてしまうことはあるのでしょうか。

例えば、妻の方から「夫が借金を抱えていて破産は免れないので、離婚して、その際に私の方に家などの財産を移転させておきたいのですが大丈夫でしょうか。」という相談を受けることは多々あります。

結論から言えば、あまりに過大な財産分与と評価されてしまう場合には、後に夫の破産手続の中で裁判所から取り消すよう命じられてしまうことになります。

破産手続というのは、裁判所が破産を申し立てた人(破産申立人といいます。)の借金と、残っている財産を調査し、残っている財産では借金を返済できないと認めて借金をチャラにする手続です。借金をチャラにするということは、債権者は大きな不利益を被るわけですから、裁判所としては債権者が不当な不利益を受けないように、破産申立人が本当に財産がないのかどうかということを厳しくチェックします。

特に、世の中には、財産を隠して、借金だけを免れようとして破産を申し立てる人がどうしても一定数存在するので、裁判所は破産申立人が破産の申立の直前に財産を隠していないか、特に破産の申立前にどこかに財産を隠匿していないか、ということを一番気にするのです。

したがって、離婚の際の財産分与といえども、それが破産申立人の財産の隠匿と評価されてしまうような過大な財産分与であった場合には、後で取り消されてしまいます。

もっとも、どのような場合に、離婚の財産分与が財産の隠匿となるのか、過大な財産分与となるのか、という点については未だはっきりした基準はなく、また、公開されている裁判例も少ないため見極めが難しいです。

例えば、東京地裁平成18年7月14日判決のケースは、離婚後約1年後に夫が破産の申立をしたが、離婚の際には既に夫が多額の負債を負っていたというケースで、離婚時の財産分与として夫が妻に約8000万円の不動産と、現金5000万円を譲渡したことに対して、裁判所は8000万円の不動産については財産分与としては過大だとして、譲渡を取り消しました。

このケースは、夫が石油類の販売、石油製品の製造をするグループ会社の社長で、相当の資産家であったためにかなりスケールの大きい話になっていますので、いわゆる一般のサラリーマン家庭の場合にはあまり参考にならないのですが、総財産の2分の1を超える財産分与については、課題と評価されるリスクはあるということは示唆していると思います。

離婚の財産分与というのは、現在は実務上「2分の1ルール」というのが定着していますので、総財産の2分の1までの分与は問題なく認められます。

したがって、2分の1を超える財産分与をした場合には、2分の1を超える合理的理由、例えば、財産を分与する側に離婚原因があったとか、分与される側に扶養的な財産分与を認めるべき事情があったという理由がないと、「過大な財産分与」と評価されるリスクが出てくるのではないかと思います。


2015年11月30日更新