離婚の慰謝料として1500万円が認められたケース

Q 夫が不倫をして家を出ていってしまいました。

夫からは離婚を強く迫られています。

私としては不本意ではありますが、離婚せざるを得ないと考えていますが、夫が許せないので慰謝料を請求したいです

この場合の慰謝料は、インターネットや本などで見ると300万円というのが一つの目安のようですが、それ以上の金額が認められることはありますか?

A 不倫による離婚の場合であっても、ケースによって300万円以上の慰謝料が認められることがあります。

離婚の法律相談の場面では

「夫が不倫をして家を出ていってしまい、その後離婚するよう迫ってきた。」

という相談を受けることが多いです。

この場合に、妻としては

・離婚を拒絶する

・慰謝料をもらって離婚する

のいずれかを選択してその後の対応を考えることとなります。

では、慰謝料をもらって離婚することを決めた場合、配偶者が不倫したことを原因として離婚をせざるを得なくなった場合に請求できる慰謝料はいくらぐらいでしょうか。

この場合の金額については様々な文献やインターネットで書かれていますのでご存知の方も多いと思いますが、裁判上認められている相場は「200~300万円」です。

もっとも、この数字は、昭和50年頃から変わっていないと言われています。

昭和50年からすれば物価は上昇し、交通事故の慰謝料は現在は倍になっているのに、なぜかこの慰謝料だけは30年以上前の金額からほとんど変わっていません。

それはさておき、このような「相場」の金額に対し、大半の方は「少なすぎる」と不満を漏らすのですが、不倫の慰謝料で300万円を超えるケースというのはかなり少ないのが現状です。

では、300万円という一般的な相場を超えるような慰謝料が認められるケースとはどのようなケースなのでしょうか。

これは、正直なところケースバイケースとしか言いようがないのですが、今回紹介する裁判例は、1500万円というかなり高額な慰謝料が認められています。

その理由としてあげられている事情は

・夫が不倫して家を出た際に妻に建物を渡したのみで、その後40年間の別居期間中全く生活費等を渡さなかったこと。

・夫が不倫相手と会社を3つ経営し、資産家であったこと。

です。

なお、このケースは昭和12年に結婚して、昭和24年に夫が不倫してそれから別居状態となり、離婚裁判を起こすも認められず、最終的に別居してから40年以上たった平成元年に、ようやく裁判で離婚が認められたというケースです。

判決言渡時には夫も妻も70歳を超えていました。

このように少し特殊なケースではありますが、このケースから一般的な基準を見出すならば、慰謝料が相場よりも増額される要素としては

・別居後に生活費などの援助をしていたかどうか

・不倫した配偶者が資産を持っているか(高収入か)

という点になるでしょう。

したがって、離婚を求める側としては慰謝料を増額されないためには、別居後も生活費はしっかりと払う必要があるでしょうし、慰謝料を求める側としては、別居後に生活費が支払われていないならばその事情を裁判所に訴えて慰謝料の増額を求めることになります。


【判旨:東京高等裁判所平成元年11月22日判決】控訴人:夫、被控訴人:妻

「控訴人は、昭和24年8月ころから丙野月子と同棲し不貞行為を継続しているものであり、しかも被控訴人と別居するに際して文京区○○町所在の建物(当時の価格24万円)を与えたほかには40年間何らの経済的給付をせずに今日に至つたのであつて、被控訴人を悪意で遺棄したものというべきであるから、控訴人には民法第709条に基づき被控訴人が受けた精神的損害を賠償する義務がある。」

「そこで慰籍料の金額について検討するに、被控訴人は破綻の原因を作出していないのに自己の意思に反して強制的に離婚させられ、控訴人が不貞の相手方たる丙野月子と法律上の婚姻ができる状態になることは被控訴人に多大の精神的苦痛を与えることは明らかであり、控訴人が丙野月子と生活して2人の子供も生まれ、一家によつて会社を経営し、相当程度の生活を営んでいることは前記のとおりであ」る。

「一方、被控訴人は実兄の家に身を寄せ、今日まで単身生活を送つてきたこと、その他一切の事情を斟酌するならば、被控訴人の精神的苦痛(控訴人が破綻原因を作つてから本件慰籍料請求反訴状が控訴人に送達された平成元年7月28日まで)を慰籍するには1500万円をもつて相当というべきであり、控訴人は被控訴人に対し右金員及びこれに対する不法行為の後である平成元年7月29日から完済に至るまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。」


2015年11月30日更新