遺留分が問題となるケースというのは、まさに遺言がある場合です。

例えば、父と母、その子ども二人(長男、次男)という4人家族のケースで、父が亡くなった場合で考えてみます。

父が亡くなった場合、遺言がない場合には民法900条が定める法定相続分で相続することとなりますので、この場合は

  • 母が2分の1
  • 長男、次男がそれぞれ4分の1

という割合にしたがって各々が父の遺産を相続することとなります。

しかし、父が

「全財産を長男に相続させる。」

という遺言を残して死亡した場合はどうなるでしょうか。

民法が定める法定相続分というのはあくまでも遺言のない場合の相続人の相続分を規定するものに過ぎず、遺言がある場合には遺言の内容が優先となります。

したがって、この場合は遺言の内容に従い、長男が全財産を相続し、母と次男は何も相続できない、という状態が生じます。

このような場合、妻と次男は「自分も相続できたはずなのに・・・」という期待をまさに裏切られたこととなります。

そこで、妻と次男の相続に対する期待を実現するための手段として、長男に対して「遺留分」という権利があることを主張することになるのです。

遺留分というものは、相続人に最低限認められている権利ですので、遺言によってもそれをゼロにすることはできません

したがって、遺留分を侵害する内容の遺言は、遺留分に抵触する限りでは「無効」ということになるのです。