相手が裁判所の決定に従わず、子どもを引き渡さない場合の対処法(強制執行について)

Q 夫とは別居しており、現在離婚協議中です。

子どもは私が育てていたのですが、ある日夫が突然家にやってきて、子どもを連れていってしまいました。

そこで、家庭裁判所に子の引渡しの審判の申立をして、最終的には「子どもを妻のもとに戻しなさい」という内容の家庭裁判所の審判をもらうことができました。

しかし、その後も夫は家庭裁判所の審判には従わず、私のところに子どもを戻そうとしません。どうしたらよいでしょうか?

裁判所に対して、強制執行の申立てをする、という手続きをとることとなります。

強制執行というものには、大きく分けて以下の二つの手段があります。

①直接強制

大雑把に言うと、裁判所の執行官が直接夫のところに行って子どもを連れ戻す、という手続きです。

例えば、執行官が夫の家に赴き、夫に対して説得をして、もしくは有無を言わさず室内に立ち入って子ども連れ出したり、子どもの学校や保育園の帰りを狙って連れ戻したりといった、要するに実力行使による連れ戻しの手段です。この手段が成功すれば、子どもはすぐに妻のもとに戻ってきます。

しかし、夫が子どもを打き抱えたまま離さずに絶対に引き渡さなかったり、執行官が夫の家に赴いて子どもを戻すよう求めても鍵を閉めて応じなかったりするなど強硬に拒んだ場合、現実的に執行官が子どもを連れ戻すことが困難です。

このような状況になってしまった場合には執行官が連れ戻しは不可能であると判断し、子どもを連れ戻すことなく手続きはそこで終了してしまいます。

また、執行官によってはそもそもこの直接強制という手続自体に難色を示して(子どもをあたかも物のように扱う手続とも思われるため)、執行官に直接強制の申立をしても「できない」と言って却下されてしまうことも多いのが現状です。

したがって、その場合は、以下の②の手段しか取れる手段は有りません。

②間接強制

裁判所が夫に対して、「妻のもとに子どもを戻さなければ、一日あたり~円の金銭の支払をせよ。」という命令を発して、間接的に子どもを戻すよう促します。

金額については一日あたり1~5万円の範囲内で決められることが多いです。

このように間接的にプレッシャーを与えて子どもの連れ戻しを図るのが間接強制という手続きです。


2015年11月30日更新

公開日:2015年12月01日 更新日:2017年02月14日 監修 弁護士 北村 亮典 プロフィール 慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。東京弁護士会所属、大江・田中・大宅法律事務所パートナー。 現在は、建築・不動産取引に関わる紛争解決(借地、賃貸管理、建築トラブル)、不動産が関係する相続問題、個人・法人の倒産処理に注力している。