宿泊を伴う面会交流を合意する場合の間接強制を意識した調停・審判条項の決め方

調停や裁判で、面会交流について条件を定めたのに、その後に相手がそれを守らず子供に会えなくなってしまったという場合、どうしたらよいでしょうか。
相手に掛け合ってもらちが明かない場合は、裁判所を通して何とか約束通り面会を実現するように求めていかなければなりません。この場合の法律的に取りうる手段としては裁判所に強制執行を申し立てるということになります。

この場合の強制執行とは、「間接強制」という方法になります(間接強制については、https://iryubun-bengoshi.jp/444の記事を御覧ください。)。

「間接強制」を行うためには、最高裁判所平成25年3月28日決定が

「面会交流の日時、各回の面会交流時間の長さ及び子の引渡しの方法」

を定める必要がある、と判示していますので、調停や審判、裁判では、この点を具体的に決めておく必要があります。

もっとも、上記の最高裁判所の事例は、面会を伴わない月1回の定期的な面会についての具体的な定め方の事例であり、宿泊を伴う面会ついては、同様に調停で事細かく条件を決めるという事はあまり行われていませんでした。

そのため、宿泊を伴う面会の約束が破られた場合の強制執行の手段を確保するために、調停でどのように定めたら良いのかと悩む場面もしばしば生じていたのですが、この問題について参考になりそう事例が家庭の裁判と法で紹介されていました。京都家庭裁判所平成26年2月4日審判のケースです。

このケースは、宿泊を伴う面会交流についても、間接強制を意識して具体的に定めており、面会交流の権利を確保したい方々にとっては実務上参考になる思われます。

 

別紙 面会交流実施要領(申立人を母,相手方を父という。)

1⃣面会日,面会時間

(1)毎月1回,日曜日の午前9時から午後5時まで

(2)上記(1)とは別に,毎年,①7月20日から8月31日までの間,②12月26日から1月7日までの間に,それぞれ2泊3日程度の宿泊を伴う面会交流

(3)上記(1)の面会実施日は,前月末日までに母と父が協議して定めるが,協議が調わない場合は,第3日曜日とする。

(4)上記(2)の面会日は,①では7月19日まで,②では12月25日までに父と母が協議して定めるが,協議が調わない場合には,①については8月1日から3日まで,②については,12月27日から29日までとし,待ち合わせ場所及び方法は,2項のとおりとする。

2⃣待ち合わせ場所及び方法

(1)待ち合わせ場所

○○駅改札口を出た広場付近

(2)待ち合わせ方法

母が,上記面会交流開始時刻に未成年者を待ち合わせ場所に連れて行き,未成年者を引き渡し,父が面会終了時刻に待ち合わせ場所まで未成年者を連れて来て引き渡す。

3⃣面会場所の制限

父は,上記1(1)の第1回及び第2回面会日に限り,未成年者との面会は○○市内で行うこととする。

4⃣父の保育園行事への参加について

(1)母は,保育園の意向に反しない限り,父が保育園の運動会,生活発表会等の保育園行事に参加することを認め,父と母は,父が参加できる学校行事について別途協議をして決める。

(2)母は,保育園から行事日程の連絡を受けたときは,すみやかに父に連絡する。

5⃣誕生日,クリスマスなどの未成年者へのプレゼントの渡し方

父と母が協議をして決めるが,協議が調うまでは,誕生日やクリスマスに近接する面会日に父が直接未成年者に手渡すこととする。

6⃣面会日等の変更

未成年者の病気,その他やむを得ない事情により,上記1項の日時に面会交流が実施できない場合には,当該事由の生じた当事者は,速やかに他方当事者に連絡し,双方協議の上代替日を定める。協議が調わないときは,1(1)の面会日は,第4日曜日の同じ時刻とする。

7⃣連絡方法等

父と母の連絡方法は,原則としてメールによる。

8⃣その他

(1)当事者双方が合意をしたときは,上記1項ないし7項の内容を変更することができる。

(2)当事者双方は,未成年者の福祉に配慮し,特に未成年者の体調の変化に注意する。


2015年12月21日更新

公開日:2015年12月21日 更新日:2017年02月14日 監修 弁護士 北村 亮典 プロフィール 慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。東京弁護士会所属、大江・田中・大宅法律事務所パートナー。 現在は、建築・不動産取引に関わる紛争解決(借地、賃貸管理、建築トラブル)、不動産が関係する相続問題、個人・法人の倒産処理に注力している。