弁護士コラム

不倫していたことは親権者争いで不利となるか?

2015.12.01

Q 妻が他の男性と不倫していることが発覚しました。

妻は二人の子ども(5歳と2歳)を寝かしつけた後、深夜に他の男性と会って不倫をしていたようです。

これから離婚の話し合いになりますが、不倫をするような妻に子どもを任せるわけにはいきませんので、自分が親権者になって子どもを育てたいです。

妻が不倫をしていたということは、親権争いの中でこちらから強く主張できますか?

不倫をしていたことは、親権・監護権争いの中ではほとんど考慮されませんが、不倫行為が、子の養育に具体的に悪影響を及ぼしている場合には考慮されます。

妻が不倫しなければ、夫婦関係が悪くなることもなく、子どもたちも両親の離婚という不幸な経験をすることもなかったはずです。

そのように考えれば、不倫をした、ということは子どもに対しての裏切り行為であり、したがって、それは親権・監護権争いの中で不利な要素として考慮すべきようにも思われます。

しかし、子どもの親権・監護権というものは、今まで夫と妻のどちらが子どもを育てていたか、とか、どちらが今後も健やかに育てていけるか、子の養育態勢はどちらが整っているか、という点を中心に判断されます。

あくまでも、子どもの実際の養育方法や環境という観点で決せられるべきものなのです。

したがって、不倫をしていた、ということはけしからん行為であり非難の対象ではありますが、子どもの親権・監護権を決める際には特に考慮すべき要素とはされないのが裁判実務です。

質問のケースは、大阪高等裁判所平成21年9月17日決定の事案とほぼ同様の事案ですが、大阪高等裁判所はこのような事案で、

「 相手方(母親)については、抗告人(父親)と同居中、 未成年者らを寝かしつけてから深夜まで、遊びに出かけ、さらにこれが高じて不貞行為にまで至ったものと認められるが、 (中略) そのために未成年者らの監護を疎かにしたような具体的事実や、 未成年者らに対して悪影響を及ぼしたような具体的事実は認められない」

「加えて、 (中略)従前のような遊びは控えざるをえないし、転居によって監護者としての自覚もできていることを考慮すれば、現時点においては、未成年者らの監護よりも自己の快楽の追求を優先するようなことは考え難い。」

と述べ、不倫をしていた母親に子どもの監護権を認めました。

もっとも、不倫をしていたことで育児・養育がおろそかになっていた、とか、自分の欲望を優先して子どもに配慮できない性格である、などという事情が認められれば、不倫をしていたということが子どもの実際の養育に悪影響を及ぼしている事になりますので、それは親権・監護権争いの中で不利な要素になります。


2015年11月30日更新

この記事の監修者

北村 亮典東京弁護士会所属

慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。東京弁護士会所属、大江・田中・大宅法律事務所パートナー。 現在は、建築・不動産取引に関わる紛争解決(借地、賃貸管理、建築トラブル)、不動産が関係する相続問題、個人・法人の倒産処理に注力している。

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