弁護士コラム

遺産の建物の分割方法

2017.06.05

Q 親が亡くなりましたが、遺産は親が住んでいた実家の建物だけです。

相続人は子ども二人ですが、二人とも実家の建物なだけに売ることは避けたいと考えています。ただし、どう分けたら良いのかもよくわかりません。

A 親が亡くなり相続が発生した場合、遺産は、法律上「共有」という状態になります。

この遺産の共有は、民法で規定されている共有と同様の性質を持ち、この遺産の共有及び分割方法については民法で定められている規定が第一次的に適用されます。

民法は以下のように規定しています(一部抜粋。下線は筆者)

(共有物の分割請求)

第256条  各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。

(裁判による共有物の分割)

第258条  共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。

2  前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。

この民法の規定ぶりから、民法258条2項により「現物分割」が遺産分割の原則となると考えられています。

そして、当該不動産の有効利用という観点に反しない限り分割して取得者を決めることを本則とすべきであると言われています(「遺産分割事件の処理を巡る諸問題」司法研修所編 315頁以下参照)。
ですので、不動産を「共有のまま」ということにはせず、基本的には現物分割等の方法で分けられることになります。

ここで問題になるのは、例えば、遺産の不動産が

・一戸建て

・マンションの一室

の場合です。

このような場合に、「現物で分割する」ということは現実的ではありません。一戸建ての建物やマンションの一室を現実的に切って分けることはできませんし、所有権を分けることも不可能だからです。

しかし、一棟の建物が区分所有が可能な構造であれば別です。

これは、わかり易い例で言えば、戸建てであっても二世帯住宅の場合や、アパート又はマンション一棟で中が幾つかの独立した居室に分かれている場合などが当てはまります。

このような場合、各相続人が取得する建物の部分(専有部分)を決め、その敷地である土地は専有部分の床面積の割合に応ずる持ち分により共有するという現物分割が可能であると言われています(区分所有法22条2項、14条)(「現物分割の問題点」今井理基夫 判例タイムズ1100号400頁)。

現物分割が不可能な場合には、「換価分割」(売ってお金で分ける)又は「代償分割」(誰か一人が所有権を取得し、他の相続人に対価を支払う)の方法に拠るしかありません。


2017年6月3日更新

この記事の監修者

北村 亮典東京弁護士会所属

慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。東京弁護士会所属、大江・田中・大宅法律事務所パートナー。 現在は、建築・不動産取引に関わる紛争解決(借地、賃貸管理、建築トラブル)、不動産が関係する相続問題、個人・法人の倒産処理に注力している。

お問い合わせ

お問い合わせ

TEL

受付時間 :9:30~19:0003-6550-9662定休日:土曜・日曜・祝日