遺言書は、法律の定める方式(日付の記載、押印の有無など)に従って書かれていない限り無効とされます。
また、たとえ方式に従って書かれている遺言であったとしても、その具体的な内容(どの遺産を誰に相続させたいのか)がしっかり書かれていないと、やはり効力が生じないということになってしまいます。
もっとも、遺言書の文言だけでは判然としない、という内容であったとしても、可能な限り遺言者の遺志を汲んで有効になるように解釈すべき、というのが最高裁判所の考え方です。
最高裁判所昭和58年3月18日判決は、遺言書の解釈指針について、以下のように述べています。
「遺言の解釈にあたつては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究すべきものであ」る。
「遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたつても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究し当該条項の趣旨を確定すべきものであると解するのが相当である。」
もしも、趣旨が判然としない遺言書の文言があったとしても、上記指針に従って、文言だけではなく、その他の条項や周辺事情も踏まえた遺言書の解釈というものが重要となります。
この記事は2020年3月29日時点の情報に基づいて書かれています。
この記事の監修者
北村 亮典東京弁護士会所属
慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。東京弁護士会所属、大江・田中・大宅法律事務所パートナー。 現在は、建築・不動産取引に関わる紛争解決(借地、賃貸管理、建築トラブル)、不動産が関係する相続問題、個人・法人の倒産処理に注力している。