弁護士コラム

相続人の中に行方不明の者がいる場合、遺産分割や調停はどうやって進めればよいか?

2015.11.27

Q 母が亡くなりました。

相続人は、私と兄と弟の3人なのですが、私も兄も、弟とはかれこれ30年以上連絡をとっていません。

住民票の住所にも住んでおらず、どこで生活をしているのか皆目見当もつきません。このような場合、遺産分割協議や調停はどのようにしたら良いのでしょうか。

A 家庭裁判所に「不在者財産管理人」を選任してもらうことで手続を進めることができます。

遺産分割協議や調停は、「相続人全員の合意」がなければ成立しません。遺産分割協議書には全員の署名・押印が必要ですし、銀行や不動産の名義移転の手続にしても同様です。したがって、行方不明の者がいる場合は、遺産分割協議も、遺産分割調停も進めることができません。

では、遺産分割を進めるためにはどうすれば良いのかというと、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任の申立をすることになります。

これは、その名のとおり、行方の知れない者=不在者の財産を、本人に代わって管理する権限を有する者を裁判所が選任するというもので、このようにして選任された不在者財産管理人は、不在者の財産を管理、保存するほか、家庭裁判所の許可を得て不在者に代わって、遺産分割、不動産の売却等を行うことができるのです。

したがって、相続人は不在者財産管理人との間で遺産分割協議や調停を行うことができ、手続を前へと進めることができるのです。

もっとも、裁判所に不在者財産管理人の選任をしてもらう場合、遺産分割協議が目的の場合には、弁護士等の第三者の専門家が選任されることが多いですのですが、不在者財産管理人はボランティアではなく、また、国がその費用を払ってくれるわけではありませんので、不在者財産管理人の選任を求める者が、この不在者財産管理人の報酬を確保するために、申立てる際に予めお金を裁判所に納めなければなりません。

その金額は、ケースバイケースですが、概ね10万~50万円程度となることが多いようです。


2015年11月30日更新

この記事の監修者

北村 亮典東京弁護士会所属

慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。東京弁護士会所属、大江・田中・大宅法律事務所パートナー。 現在は、建築・不動産取引に関わる紛争解決(借地、賃貸管理、建築トラブル)、不動産が関係する相続問題、個人・法人の倒産処理に注力している。

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