Q これまで、子どもの出産祝いや入学祝いでもらった祝い金については、子ども名義の銀行口座を作って、そこに貯金しておきました。
その後、夫と離婚することになり、私が子どもを引き取ることとなったので、子ども名義の預金もそのまま私が管理しようとしたのですが、夫から
「離婚するんだから、子ども名義の預金も半分に分けるべきだ」
と言われました。
子ども名義の預金も離婚の際は財産分与で分けなければならないのでしょうか?
A 祝い金等を貯めた子ども名義の口座の場合には、子どもの財産となるので財産分与の対象とはならないと考えられます。また、子どもの将来の教育費のため、結婚資金等子どものために使う意図で預金したものであった場合も同様に財産分与の対象とならない可能性があります。
子ども名義の預金口座を作って、子どもの出産祝いや入学祝いなどの祝い金をその口座に預金したり、子どもの将来の教育費などの備えとしての貯金を子ども名義の口座に預金したり、ということは多くの家庭で行われているように見受けられます。
しかし、その後不幸にもこの夫婦が離婚に至ってしまった場合、子ども名義の預金口座に入っている預金は、離婚時の財産分与の対象として夫婦で分けなければならないのでしょうか。
本件のような場合、妻の立場としては、「子どものために貯めた子供名義の預金だから、夫婦で分けるのではなく子どものものとして扱うべきだ。」、という言い分になります。
果たして、このような言い分は認められるのでしょうか。
出産祝いや入学祝い等の祝い金は、第三者から子どもに贈与されたものとみることが可能ですので、子供名義の預金はあくまでも子どものものであるとして、夫婦の財産分与とは無関係と言えるでしょう。
問題は、夫婦の収入を、単に子供名義の口座に積み立てていたような場合です。
この場合の子供名義の口座の預金は、夫婦の収入が原資となっているものですから、夫婦の財産といえ、なお財産分与の対象となりうるのが原則的な考え方と言えます。
しかし、そうであったとしても、それが子どもの将来の教育費のため、結婚資金等子どものために使う意図で預金したものであった場合には、親から子どもに贈与されたものとして、夫婦の財産とは別のものになるという考えもあります(以下の裁判例)。
いずれにしても、この問題は形式的に判断することは困難であり、子ども名義の預金がなされた状況や、それが夫婦共有財産に占める割合などの事情を総合考慮して決められることになることが多いでしょう。
【判旨:高松高等裁判所平成9年3月27日判決】
「なお、控訴人は、右認定の財産のほか、長女春子名義の預金二四三万三五四六円及び三女秋子名義の預金一三七万三九九一円も、財産分与の対象に含めるべきであると主張するが、いずれも子に対する贈与の趣旨で預金されたと認めるのが相当であるから、財産分与の対象財産とならない。」
2015年11月30日更新
この記事の監修者
北村 亮典東京弁護士会所属
慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。東京弁護士会所属、大江・田中・大宅法律事務所パートナー。 現在は、建築・不動産取引に関わる紛争解決(借地、賃貸管理、建築トラブル)、不動産が関係する相続問題、個人・法人の倒産処理に注力している。