Q 夫と離婚することになり、現在中学生の子どもは私が引き取り親権者になることとなりました。夫とは、養育費の支払いについて、公正証書で取り決めてして欲しいと話し合いをしています。私は子どもが大学に進学することも考えて、せめて大学卒業までは払って欲しいと求めています。
しかし、夫は
「高校卒業までしか払わない。百歩譲っても二十歳までだ。」
と言って聞きません。
離婚した後の子どもの養育費というのは子どもが成人するまでしか支払われないのでしょうか。子どもが大学に進学した場合、大学を卒業するまで支払われるのでしょうか。
A 離婚時にすでに子どもが大学に進学していたり、両親がどちらも大卒で、子どもも小さい頃から当然のように四年制大学に進学することを前提として教育を受けていたというような事情がある場合には、四年制大学を卒業するまで養育費が認められることもあります。
養育費というのは子どもが「未成熟子」である間に支給されるべきものというのが法律の考え方になります。
「未成年」ではなく「未成熟子」となっているのがポイントです。
「未成熟子」とは、親の監護なしには生活できない状況にあるため親に特に高度の扶養義務を課す必要の認められる子、と言われています。
このように、「未成熟子」という言葉は広い意味を持つので、その解釈によって養育費が支払われる期間というものも左右されることになります。
現在の裁判実務の傾向は、養育費が支払われるのは子どもが「成人するまで」、すなわち20歳になった誕生日の月までというのが基準となっています。
したがって、協議・調停で話し合いがつかず、裁判所で審判、判決となる場合には「成人するまで」という結果となることがほとんどです。
では、子どもが例えば4年制大学に進学した場合、大学を卒業するまで(通常は22歳まででしょう)支払われないのでしょうか。
夫婦の合意があれば、大学卒業まで支払う旨の条項を公正証書や調停で定めることは当然可能です。
しかし、協議や調停が整わず、裁判所で審判や判決が出されるような場合には、原則として「成人するまで」との審判や判決が出されます。
大学卒業まで、という判断が出ることは稀です。
しかし、離婚時にすでに子どもが大学に進学していたり、両親がどちらも大卒で、子どもも小さい頃から当然のように四年制大学に進学することを前提として教育を受けていたというような事情がある場合には、四年制大学を卒業するまで養育費が認められることもあるようです。
なお、最近は離婚調停などの話し合いの際に、お互いが合意の上で、大学に入学した場合の条件付きで、四年制大学を卒業するまで養育費を支払う、という合意をするケースも多いです。
現在では四年制大学へ進学する子どもがかなりの数に及んでおり、その間も子どもが経済的になかなか自立できないという現実を考えれば、親が子供の為に大学卒業まで養育費を支払ってあげるのが本来の形である・・・と言いたいところですが、調停や裁判では、夫婦間の心情的な事情もあり、経済状況もあり、なかなか難しい問題です。
2015年11月30日更新
この記事の監修者
北村 亮典東京弁護士会所属
慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。東京弁護士会所属、大江・田中・大宅法律事務所パートナー。 現在は、建築・不動産取引に関わる紛争解決(借地、賃貸管理、建築トラブル)、不動産が関係する相続問題、個人・法人の倒産処理に注力している。