弁護士コラム

結婚生活に対する満足度は男性よりも女性の方が低い?

2015.12.07

離婚の法律相談をしていますと、夫側から、以下の様な相談をお受けすることがあります。

「妻と夫婦喧嘩した翌日、妻が何も言わず家を出て行ってしまい、その後離婚を要求されています。いつもの夫婦ゲンカと思っていたので、妻がそこまで思いつめていたとは思いもしませんでした。私は離婚したくないのですが、妻に何とか考えなおしてもらえないでしょうか。」

上記のケースは、夫は夫婦関係が問題無いと思っていても、実は妻には不満がどんどん蓄積していて、ある日それが爆発して離婚に至る、というケースです。

このような夫と妻との間の意識の違いはどうして生じてしまうのでしょうか。

この答えの手がかりとなる一つの考え方が家庭裁判月報(第65巻6号)掲載の「わが国における家族の動向とその将来について」(稲葉昭英)という論文に記されています。

同論文は、夫婦の結婚満足度について概ね以下のように説明しています。

全国家族調査によれば、夫婦間の情緒的サポートについてみると、妻はより多くのサポートを夫に提供するが、夫が妻に提供するサポートはこれに比較すると少ない。つまり、概して夫は妻から多くのサポートを受けているのに対し、妻は夫からそれに匹敵するサポートを受けているわけではないと指摘されています。

なお、配偶者からのサポートは、結婚直後に高く、子どもの出生後に低下、末子が中学生ころに最も低い値となり、その後子どもの学卒や離家に伴い再び高い値を取ることが指摘されているとのことです。

結婚満足度についても、男性はほとんどが高い満足とサポートを得ているのに対し、女性は一部に低い満足度とサポートを示す者がいる他、総じて男性よりはやや低い満足度を示しているようです。

なぜ、男性と女性の間でこのような満足度やサポートに差異が生じているかということについては、

・男性においては男性の友人が、女性においては女性の友人が対人関係の主要部分を占める。

・女性は他者にケアを提供してくれる友人関係を豊富に持つが、男性はこうした友人関係に乏しい。

・男性は結婚によってケアを提供してくれる希少なパートナーを持つことになる。このため、結婚への心理的なメリットが大きくなり、配偶者への心理的な依存も大きなものとなる。

・女性は恋愛や結婚にかかわらず、ケアを提供してくれる同性の友人を豊富に持つ。このため、男性ほどは結婚によって利用可能なケアが劇的に変化するわけではなく、結婚の心理的メリットや配偶者への心理的依存は男性に比較して相対的に小さなものとなる。

と推論しています。

妻から突如離婚をつきつけられてしまった男性の弁として

「自分は家族のためにひたすら仕事を頑張って家計に貢献していたのに・・・」

ということをよく耳にします。

しかし、それだけでは不十分で、その他の「ケア」を提供しないと、妻の心は次第に離れていってしまうのかもしれません。


2015年11月30日更新

この記事の監修者

北村 亮典東京弁護士会所属

慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。東京弁護士会所属、大江・田中・大宅法律事務所パートナー。 現在は、建築・不動産取引に関わる紛争解決(借地、賃貸管理、建築トラブル)、不動産が関係する相続問題、個人・法人の倒産処理に注力している。

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