遺産の不動産の分割について話合いで解決できなかった場合、裁判所の調停・審判ではどのように分割されるのでしょうか。
遺産の分け方というのは大きく分けて4つあります。
①現物分割
②代償分割
③換価分割
④共有分割
の4つです。
上記のうち、原則的な方法は、①の現物分割(まさにそのものを分ける)となります。
しかし、この分割方法は、例えば預金などのお金であれば単純に分けることも可能ですが、土地などの不動産の場合には、そのまま法定相続分に従って土地を分けると、例えば100㎡の土地を相続人4人で分けたら一人当たり25㎡になってしまい、もはや土地の利用価値がなくなってしまいます。
とても広い土地であれば別ですが、普通の住宅地などではまず意味のない分け方になってしまいますので、一般的な宅地が遺産の場合にはこの方法によることはできません。
次に考慮される方法としては、②の代償分割となります。
この方法は、誰かが土地を相続することと引き換えに、土地を相続しない相続人に対して法定相続分に相当する土地の価値相当額(代償金)を支払うという方法です。
しかし、誰も「そんな土地なんかいらない!」と言って欲しがらない場合はこの方法は使えませんし、また、都市部だと不動産の価値も高いことが多く、代償金額も数千万円になってしまいますので、誰も代償金を払えず・・・、ということも多いです。
そうなった場合、最終的な手段として③換価分割という方法が認められます。
この方法は、不動産を競売にかけて、その競売代金を相続分に従って分割するという方法です。
要は強制的にお金に変えて分けてしまう、という方法です。
話合いがつかなければ、裁判所はこの「換価分割」という方法の決定を下すことになります。
もっとも、この換価分割はあくまでも最終的な手段ですので、やはり裁判所も簡単にはその方法での分割は認めません。
現物分割や代償分割が本当に不可能なのか、換価分割がやむを得ないものなのかどうかを慎重に審理する傾向があります(仙台高等裁判所平成5年7月21日決定)。
なお、現物分割も代償分割もできないような場合は、通常は、遺産分割調停の中で「不動産を仲介業者に委託して不動産を売却してもらいその売却代金を分割する旨の合意」をし、その後に任意売却してその代金を分けるという方法がとられます。
競売だと市場価格の5割~7割くらいで処分されてしまいますが、仲介業者を通じた任意売却によれば、市場価格で売却されることがほとんどですので、売買代金も高くなります。したがって、現物分割も代償分割もできない場合は、このような方向の話合いになっていくことが多いです。
なお、裁判所が何らかの理由で「換価分割」も認めない、となった場合は、④の共有分割という分け方になります。
これは、不動産を法定相続分に従って、「共有」にするというものです。
もっとも、不動産を「共有」にしても、これはあくまでも問題を先送りにするだけということで、よほどの事情がない限りはこの方法は採られません。
仮に「共有」となった場合は、さらに、その後に別途「共有物分割請求訴訟」を提起して、分割を求めていく必要があります。
2015年11月30日更新
この記事の監修者
北村 亮典東京弁護士会所属
慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。東京弁護士会所属、大江・田中・大宅法律事務所パートナー。 現在は、建築・不動産取引に関わる紛争解決(借地、賃貸管理、建築トラブル)、不動産が関係する相続問題、個人・法人の倒産処理に注力している。