遺留分の算定方法は、遺留分の計算方法で詳しく説明していますが、ごく簡単にいえば、遺留分の算定にあたっては、遺産の総額から
被相続人の債務(借金)
を差引いた上で、各人の遺留分額を算定します。
したがいまして、債務(借金)の有無は、遺留分の金額を大きく左右する要素です。
この債務(借金)に含まれるか否かが問題となるものとして
被相続人が連帯保証人だった場合の保証債務
があります。
例えば、親が友人・知人又は会社の借金1000万円の連帯保証人となっていた場合は、1000万円が遺留分の算定において控除されるのか、という問題です。
この点については、東京高裁平成8年11月7日判決は、
原則として、保証債務は遺留分の算定において考慮されない
と判断しました。
すなわち、東京高裁は
「主たる債務者が弁済不能の状態にあるため保証人がその債務を履行しなければならず、かつ、その履行による出捐を主たる債務者に求償しても返還を受けられる見込みがないような、特段の事情が存在する場合でない限り」
「民法一〇二九条所定の「債務」に含まれないものと解するのが相当である。」
と判断しました。
その理由として
「保証債務(連帯保証債務を含む)は、保証人において将来現実にその債務を履行するか否か不確実であるばかりでなく、保証人が複数存在する場合もあり、その場合は履行の額も主たる債務の額と同額であるとは限らず、仮に将来その債務を履行した場合であっても、その履行による出捐は、法律上は主たる債務者に対する求償権の行使によって返還を受けうるものである」
と述べています。
2016年2月16日更新
この記事の監修者
北村 亮典東京弁護士会所属
慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。東京弁護士会所属、大江・田中・大宅法律事務所パートナー。 現在は、建築・不動産取引に関わる紛争解決(借地、賃貸管理、建築トラブル)、不動産が関係する相続問題、個人・法人の倒産処理に注力している。