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特別受益とは?
特別受益とは、相続人の一部が被相続人から生前に受けた贈与や遺贈のことを指します。具体的には、結婚資金の援助、不動産の贈与、事業資金の提供などが該当します。
この制度の目的は、相続人間の公平性を保つことです。例えば、ある相続人が生前に多額の贈与を受けていた場合、それを考慮せずに相続財産を均等に分けると不公平が生じます。
そこで、特別受益を受けた相続人の相続分は、その分だけ減額されます。計算上は、特別受益の価額を相続財産に加えた上で各人の相続分を算出し、特別受益を受けた人の相続分からその価額を差し引きます。
ただし、被相続人が「持ち戻し免除」の意思表示をしていた場合は、特別受益として扱われません。
特別受益の対象となる財産
生前贈与とその判断基準
一般的に、結婚時の支援、自宅や自動車の購入資金の贈与、事業開始資金などが特別受益に該当します。扶養義務の範囲を超えた生活費の援助も特別受益となることがあります。
遺贈と死因贈与の扱い
遺言による財産譲渡(遺贈)や、死亡を条件とする贈与(死因贈与)は、原則として特別受益として扱われます。
特別受益の対象外となる財産
一般的に、生命保険金、通常の生活費や教育費は特別受益に含まれません。ただし、これらに該当する場合であっても、特定の相続人が著しく高額な利益を受け取ったといえる場合は、例外的に特別受益と認められる可能性があります。
特別受益の「持ち戻し」
特別受益の「持ち戻し」とは、相続人の一部が被相続人から生前に受けた贈与や遺贈を、相続財産に加えて計算する制度です。
例えば、ある相続人が生前に1,000万円の贈与を受けていた場合、相続時にその1,000万円を相続財産に加えて計算します。これにより、他の相続人との公平性を保つことができます。
持ち戻しの計算方法
持ち戻しの計算では、まず特別受益の価額を加えた「みなし相続財産」を算出し、それを基に各相続人の相続分を計算します。その後、特別受益を受けた相続人の相続分からその価額を差し引きます。
ただし、被相続人が「持ち戻し免除」の意思表示をしていた場合や、婚姻20年以上の配偶者への自宅贈与の場合は、持ち戻しの対象外となります。
具体例
持ち戻しの計算方法を、具体的な数字を用いて説明します。
みなし相続財産の算出:
相続財産 + 特別受益 = 1,000万円 + 200万円 = 1,200万円
各相続人の相続分の計算:
みなし相続財産 ÷ 相続人数 = 1,200万円 ÷ 3 = 400万円
特別受益者(A)の実際の相続分:
Aの相続分 – 特別受益 = 400万円 – 200万円 = 200万円
他の相続人(B、C)の相続分:
それぞれ400万円
結果として、
A | 200万円 |
---|---|
B | 400万円 |
C | 400万円 |
となり、合計1,000万円の相続財産が分配されます。
この計算方法により、特別受益を受けたAの相続分が調整され、B、Cとの間で公平性が保たれます。
特別受益のことでお困りなら、弁護士へ
特別受益の問題は、相続において複雑な争いの原因となることがあります。贈与の評価額や持ち戻しの要否、さらには持ち戻し免除の有無など、判断が難しい点が多々あります。こうした問題に直面した際は、お早めに弁護士へご相談ください。経験豊富な弁護士が、個々の事案に応じた適切なアドバイスを提供し、公平で円満な相続の実現をサポートします。