遺留分侵害額の計算において、過去の特別受益の評価の方法(基準時)

被相続人により、「全財産を●●に相続させる」といった偏った内容の遺言書が遺されていた場合、遺留分を侵害される相続人が生じる場合があります。

この場合、遺留分を侵害された相続人には、遺留分侵害額請求権が発生します。

遺留分侵害額の具体的な金額を出すためには、まず、各相続人の遺留分割合をかけるための「相続財産の全体額」を算出しなければなりません。

ここで基礎となる相続財産とは、原則として

「被相続人が死亡時(相続開始時)に有していた財産全体」に

「相続開始前の1年間になされた第三者への贈与」と

「相続開始前の10年間になされた相続人への贈与」

を加えた金額となります。

ここで一つ問題となるのは、「相続開始前の10年間になされた相続人への贈与」について、その金額をどのように評価するか、という問題です。

この点については、最高裁判例(最高裁判所昭和51年3月18日判決)により、

「被相続人が相続人に対しその生計の資本として贈与した財産の価額をいわゆる特別受益として遺留分算定の基礎となる財産に加える場合に、右贈与財産が金銭であるときは、その贈与の時の金額を相続開始の時の貨幣価値に換算した価額をもつて評価すべきものと解するのが、相当である。」

と判断されています。

すなわち、「特別受益がなされた時点の評価額」ではなく、「相続開始時点の評価額」で算定すべき、ということになります。

例えば、相続開始の9年前に相続人へ1000万円の贈与がなされていた場合、相続開始時点と貨幣価値が大きく変動していた場合は、この1000万円を相続開始時点の貨幣価値に換算して評価すべき、ということとなります。

この問題は、現金の場合は、10年では貨幣価値が大きく変動することが現状ではほぼ生じていないために問題となりませんが、価値が大きく変動しうる特別受益、例えば

・不動産

・株式などの有価証券

の贈与の場合は問題となります。

たとえば、被相続人から当時1000万円だった土地を9年前に贈与され、それが相続開始時点では3000万円となっていた場合には、3000万円と計算して相続財産の価額に加えることになります。

株式についても同様で、例えば、●●会社の株を5年前に200株贈与された場合には、その株式の相続開始時点の評価額で計算するということになります。

以上の通り、特別受益の評価額の計算は「相続開始時点の評価額」ということとなります。

現物か、現金かにより評価額が大きく異なってくる場合もありますので、特別受益が争点となった場合には、土地や株などの「現物」で贈与がされたのか、それとも、購入資金等の「現金」で贈与を受けたものか、という点の検討が必要となります。


この記事は2020年4月12日時点の情報に基づいて書かれています。