弁護士コラム

面倒を見てくれた子に遺産を全て相続させようと遺言を書いたのに先にその子どもが死んでしまった。遺言の効力はどうなるのか。

2015.11.27

Q 私には息子が二人います。

次男は私の面倒を見てくれる親孝行な息子なのですが、一方、長男は放蕩息子で家のことを全く顧みない人間で、今はどこで何をしているかもわかりません。

ですので、私の財産は、私が死んだら、全て次男に与えたいと思っています。

そこで、「私の財産は、全て次男に相続させる。」という遺言を書きました。

なお、このような遺言だと長男の遺留分が問題になると聞きましたが、そんなことは関係なく、とにかく次男に全て渡したいという一心で遺言を書きました。

しかし、私が遺言を書いてから程なくして、次男が不慮の事故で亡くなってしまいました。

このような場合、私の遺言の効力はどうなるのでしょうか。

私としては、何としても長男には相続させたくないので、次男の子にそのまま全て代襲相続をさせたいと思っています。

遺言はそのままでも大丈夫でしょうか。それとも、無効になってしまうのでしょうか。

このまま何もしなくても、遺言の効力は次男の子どもに引き継がれ、次男の子どもが私の全ての財産を代襲相続することとなるのでしょうか。

A そのままでは効力はなく、次男の子には代襲相続されません。

この問題については、以前は下級審裁判例では見解が分かれていましたが、平成23年2月22日に最高裁判所の判例がでましたので、実務上の扱いがこれで確立されました。

最高裁判所の判例によれば、基本的には、遺言書の中に

「受遺者が先に死亡した場合にはその子どもらに代襲相続させる」

という内容が書かれていなければ、代襲相続はされずに遺言は無効となるおそれがある、ということになります。

したがって、本件のケースでは、親は、上記のような文言を遺言に書いていなければ、元の遺言のままでは次男の子どもに相続させることはできなくなる可能性がありますので、新たに遺言を書く必要があります。

したがって、遺言により財産を特定の者に相続させたいし、その者が自分よりも先に死んだ場合には、確実にさらにその子どもに相続させたい、という意思を持っているならば、遺言書に

「~が先に死亡した場合には、その子・・・に全ての財産を代襲相続させる。」

といった条項を入れることが必須です。


【最高裁判例判旨:最高裁第三小法廷平成23年2月22日判決】

「「相続させる」旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから、遺言者が、上記の場合には、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効力を生ずることはないと解するのが相当である。 」


2015年11月30日更新

この記事の監修者

北村 亮典東京弁護士会所属

慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。東京弁護士会所属、大江・田中・大宅法律事務所パートナー。 現在は、建築・不動産取引に関わる紛争解決(借地、賃貸管理、建築トラブル)、不動産が関係する相続問題、個人・法人の倒産処理に注力している。

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