弁護士コラム

裁判で離婚が認められるために必要な別居期間は?

2017.04.24

Q
結婚して10年になりますが、夫との考え方の違いに耐えきれなくなり、夫に離婚を申し入れましたが、夫は全く聞く耳を持ってくれません。

弁護士に相談したところ、

「離婚をするためには、別居して調停を申し立てた方が良い」とアドバイスされましたので、別居して家庭裁判所に調停を申し立てましたが、それでも夫は離婚に応じてくれず調停は終わってしまいました。弁護士からは「後は離婚訴訟を起こすしか無い」と言われています。

夫と別居してもう3年以上になりますが、裁判を起こせば離婚は認められるのでしょうか。

A
裁判を起こした場合に、不倫やDVなどの行為を理由とするのではなく、性格の不一致を理由とする場合には、離婚が認められるためには、

「婚姻を継続しがたい重大な事由」(民法770条1項5号)

というものが認められなければなりません。

これは、簡単に言えば、夫婦関係が破綻して回復の見込みがない状態である、ということです。

性格の不一致を理由とした離婚請求の場合に、この「夫婦関係が破綻して回復の見込みがない状態」というのを第三者である裁判官が判断することはとても困難を伴います。

例えば「喧嘩するほど仲が良い」と言う格言もあるように、表向きは相手を激しく避難していても内心はわかりませんし、どちらか一方が離婚を望んでおらず復縁を働きかけているような場合には、第三者からすれば「もしかしたらよりを戻す可能性があるのでは」とも考えてしまうからです。

そのため、離婚訴訟においては、夫婦関係が破綻して回復の見込みがない状態か否かを判断するために、

別居期間が相当長期に渡っているか否か

という点を非常に重視する傾向にあります。

夫婦の別居期間が長ければ長いほど、第三者である裁判官から見ても「夫婦の関係はもう回復不可能なほどに破綻している」と判断することが容易だからです。

では、その別居期間はどの程度の長さがあれば、離婚が認められる方向に傾くのでしょうか。

結論から言いますと、「この期間であれば必ず離婚が認められる」という基準はありません。

別居期間が2年程度でみとめられる場合もあれば、3年でも認められない場合もあり、まさにケースバイケースです。もっとも、敢えて言えば、

「別居期間3〜5年」

というのが一つの目安になるのではないかと考えられます。私が以前経験したケースで担当していた裁判官は「別居期間が3年あれば離婚を認める」と言っていました。

また、別居期間だけでなく、

・離婚を求める側の離婚意思の強さ

・離婚を拒絶している側の復縁意思の強さ

も考慮されています。

例えば、別居期間中に、離婚を拒絶している側が、復縁のためにどのような働きかけや言動をしていたか、という点が裁判官に考慮されているという傾向があります。

その他、結婚してから別居するまでの間の同居期間の長さ、というのも考慮される場合があります。

この点について、一つの参考事例として、東京高等裁判所平成28年5月25日判決の事例があります。

この事例は、妻が別居して、夫に離婚訴訟を起こした、という事例です。

この事案で、第一審の地方裁判所の判決は、別居期間が3年5ヶ月だったことについて、

・同居期間が10年間であるのに対して別居期間は約3年5ヶ月と短い

・夫は妻との修復を強く望み、従前の言動を真摯に反省し、時間をかけて関係改善を考えている

などと認定して、妻からの離婚請求を棄却しました。

この判決対して、妻が高等裁判所に控訴し、控訴審の終結時には別居期間がさらに延びて4年10ヶ月あまりとなっていました。

この控訴審の判決は、

「別居期間の長さは,それ自体として,控訴人と被控訴人との婚姻関係の破綻を基礎づける事情といえる。」
として、別居期間が長期に渡っていることを認めました。

加えて、「夫が,婚姻関係の修復に向けた具体的な行動ないし努力をした形跡はうかがわれず,かえって,別件婚費分担審判により命じられた婚姻費用分担金の支払を十分にしないなど,被控訴人が婚姻関係の修復に向けた意思を有していることに疑念を抱かせるような事情を認めることができる」と認定しました。

そして結論として、

「別居期間が長期に及んでおり,その間,夫により修復に向けた具体的な働き掛けがあったことがうかがわれない上,妻の離婚意思は強固であり,夫の修復意思が強いものであるとはいい難いことからすると,夫婦の婚姻関係は,既に破綻しており回復の見込みがないと認めるべきである」

と述べて、妻からの離婚請求を認めました。

先程述べた通り、最低どの程度の別居期間があれば離婚が認められるかという基準は存在しないため、具体的な判断に悩むケースも多いですが、この事例は一つの判断基準として参考になります。


2017年4月24日更新

この記事の監修者

北村 亮典東京弁護士会所属

慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。東京弁護士会所属、大江・田中・大宅法律事務所パートナー。 現在は、建築・不動産取引に関わる紛争解決(借地、賃貸管理、建築トラブル)、不動産が関係する相続問題、個人・法人の倒産処理に注力している。

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