一般の方の多くは、遺産分割調停のなどの裁判手続になると「解決までにとても時間がかかるのでは?」ということを心配されます。
では実際にどれくらい時間がかかるかというと、ケースバイケースとしか言いようがないのですが、個人的な経験では、解決までは短くても6ヶ月、通常は1年くらい、長ければ2~3年、はたまた5年10年・・・という状況だと思います。
なぜ時間がかかるかというと、調停の進め方というのは概ね
1 相続人の範囲
2 遺産の範囲
3 遺産の評価(特に不動産について)
4 遺産の分け方(寄与分・特別受益)
といった順序で話を整理しながら相続人全員の合意を得ながら進めていくことになるのですが、そもそも、この調停自体が1~2ヶ月に一回のペースでしか開かれない上、一回の調停も概ね2時間程度で終わりますので1回あたりに話ができる内容も自ずと限られてきます。
相続人間で意見の対立の激しい争点(特に2~4でつまづくことが多いです)があると、合意ができるまで調停期日を何回も重ねることとなり、そのため解決までの期間も長期化する・・・ということです。
いずれにしても、解決までにはそれなりに時間がかかってしまう遺産分割調停ですが、この程東京家庭裁判所では、遺産分割調停については1年以内で解決することを目標に、今年の9月から調停の進め方のルールを定めたようです。口頭で聞いたものなので、不正確な部分もあるかもしれませんが、概ね以下のようなルールのようです。
・調停の3回目、5回目、7回目に、調停委員と裁判官が協議する機会を設け、調停の進行状況や、調停の成立を阻害するような要素を確認する。調停7回目を1つの目処とし、7回目終了後の評議においては、調停の終結も視野に入れて解決策・進行を評議する。
・5回目を目処に争点整理を完了する。その後、6回目、7回目の調停期日を出来る限り間髪入れずに設定して(本人の気が変わらないように)、7回目までに調停が成立するように調整をしていく。
・万が一8回目までに調停が成立しなかった場合、裁判官が、なぜ調停が成立しなかったのか、その事情や理由などを確認し、調停を続けるか、審判に移行するか検討する。
以上のとおり、家庭裁判所としては、8回目の調停までには調停を成立させることを目標に調停を運営していくようです。調停が開かれるのが、概ね1~2ヶ月に一回のペースなので、調停が8回というと大体1年以内ということになろうかと思います。
紛争が長引けば当事者の精神的負担も大きくなりますので、早く調停が進み解決することに越したことはないのですが、調停というのはあくまでも話し合いの手続ですから、解決のためには双方が納得することが必要です。期間だけに囚われすぎて、各相続人の「納得を得る」という過程がおろそかにならないことを望むばかりです。
2015年11月30日更新
この記事の監修者
北村 亮典東京弁護士会所属
慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。東京弁護士会所属、大江・田中・大宅法律事務所パートナー。 現在は、建築・不動産取引に関わる紛争解決(借地、賃貸管理、建築トラブル)、不動産が関係する相続問題、個人・法人の倒産処理に注力している。